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「団地を開く」

「ミドラボ」という取り組みを2018年から続けている。敷地は本学の厚木キャンパス付近にある緑ヶ丘団地。この団地の一画を所有する神奈川県住宅供給公社とともに、エリアの活性化を目指す研究・教育プロジェクトである。フィールドワークの舞台(住むこともできる)がすぐそばにできるのは大変ありがたいことで、「学ぶ」「つくる」「暮らす」「つながる」が一体となったもうひとつのキャンパスづくり、というやや大仰な目標を掲げ、こうした機会がなければ協働の機会も限られる学内のいろいろな分野の教員や学生たちと、団地のリノベーションのアイデアづくりや環境改善の実証実験、プロモーションビデオやマンガの制作などを楽しく進めている。

当初は、この活動を通じて高齢化や空き家といった課題の解決に少しでも寄与できればとイメージしたが、その考えは少し変わっていった。というのも、この団地は、だんだん小さくなっている。入居率の実情に合わせて、集約事業が段階的に進められているからである。跡地に立ち並ぶ戸建て住宅には若い子育てファミリーがたくさん越してきて、エリアとしての人口バランスは回復している。残念なのは、新旧住民の接点がないことである。団地には、広々としたオープンスペースやコミュニティのための集会施設があるのに、団地の住民ですらほとんど使っていない。団地のそうした空間ストックを整え直し、まわりにも開いていけば、「地域のお荷物」とみなされがちな団地を「地域の資産」に変えられるかもれない。小さくても、そのための実践を積み重ねていきたい。



 

森田 芳朗(もりた・よしろう)

特別会員 東京工芸大学教授


 

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