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会長挨拶「これまでの20年の感謝と次の20年に向けての決意」


今年は、2003年に当会の前身である団地再生産業協議会が任意団体として設立されてから丁度20年になります。現在の一般社団法人団地再生支援協会になったのは2009年であり、それから数えると14年になります。この間、法人、個人の別を問わず実に多くの方々から、「団地再生」というテーマの重要性に対する認識とそれに取組む当会の姿勢について共感して頂き、また多大なるご支援を賜ってまいりましたことに、心より感謝申し上げます。



私事で恐縮ですが、団地再生産業協議会が設立される2年前の2001年に「団地再生-甦る欧米の集合住宅-」という本を上梓しました。この本では、その副題の通り、日本に先行して欧米で見られるようになっていた、建物を建替えずに衰退・荒廃してきた居住環境を劇的に改善するタイプの団地再生を紹介することに力点を置きましたが、それは、同様の団地再生を日本でも必要とする時が間近に迫っているという認識からでした。そして、当時私自身は関与していませんでしたが、日本においてこうした団地再生に本格的に取組もうとする団地再生産業協議会が、拙著出版からそう間を置かずに活動を始めたのには、当然ながら強く共感しましたし、大きな期待を寄せもしました。



日本では、欧米の多くの取組みの背景にあった格差問題や住民の高い失業率、団地内での暴力や犯罪等の団地荒廃という現象はあまり見られず、むしろ住民の急速な高齢化と建物等の陳腐化・老朽化とが同時に進行するという現象こそが団地問題の核心にありました。日本独自の団地再生の方法が求められていたわけです。団地再生産業協議会とその後継としての当会は、この日本独自の方法が求められる状況を正しく認識し、そのことに実践的に取組む日本初の団体として、方法論の確立や人材の育成、社会に対する啓発等の面で成果を上げてきました。ただ、それらの取組みが先進的だったことの裏返しでもありますが、実際に日本の各地で団地再生の需要が顕在化してきたのは、この20年ではなくこの数年と言って良いでしょう。そうした観点からしますと、これまでの20年はいわば助走段階であり、これからの10年、20年が本格的な実践段階になると考えています。悠長な話のように聞こえるかもしれませんが、既存ストックを活かした居住環境形成は、地に足をつけた活動でなければならず、にわか仕立ての急ぎ足では進みません。



団地再生支援協会の次の20年に向けては、これまで共感とお力添えを賜った方々に、引き続きのご支援をお願い申し上げると同時に、新たな法人、個人の方々にも共感の輪を広げ、活動基盤の拡充に更なるお力添えを賜ることがとても重要になると考えます。どうか、団地再生という益々重要になる分野について、長く取組んできた当会の志にご理解を賜り、これまで以上のご指導ご鞭撻をお願い申し上げる次第です。



これまでの20年、誠に有難うございました。そして、これからの20年もどうぞよろしくお願い申し上げます。




 

松 村 秀 一 (まつむら・しゅういち)

一般社団法人団地再生支援協会 会長


 




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