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「20年後の団地に花を咲かせる」

仕事柄団地でお話をする機会が多い。どの団地でも高齢化は想像以上の速さで進んでいる。一方で、最近は元気な女性の姿が増え、子育て世代の顔もちらほら見える。概して、理事や委員会のメンバーが多様性に富んだ団地は風通しの良さや明るい活気があり、再生への取り組みにも前向きであるような気がする。まさに多様性こそ共同体再生のカギと言われる所以だ。

ところで、20年後団地を取り巻く状況はどう変化しているのだろうか。個人的な願望を言えば、そこでは志や地域、価値観などで繋がった「共同体」が百花繚乱でうごめき、うごめく力がエネルギーを生むような社会が実現していてほしい。再生とは硬直化したストックをフローに換え、フィードバックによって練り上げつつ、新しいストックを生み出すこと。塩漬けになったまま動かなくなった共有資産をより良い住環境の整備や新しい生活へのスタートのために有効に活用できる仕組みが団地の再生でも求められている。

まずは大規模な団地を必要に応じて独立した共同体として活動し易いサイズに分割し、分割後の敷地間で住戸交換などにより構成員の組換えができる仕組みが必要ではないか。ストックがフロー化すれば、その後はそれぞれの共同体が、その土地に合った花を咲かせることだろう。

は極めて重要な課題ではないかと思っている。近年建築を離れてエネルギーや温暖化問題を中心に仕事をしている立場から見ても、団地再生は避けて通れない課題ではないかと考えている。公団住宅以降の集合住宅は民間事業者の手にゆだねられているが、ストックの再生といったテーマは民間レベルでは極めて敷居の高い課題ではないだろうか。その意味でも国が率先して公団団地におけるモデル的な団地再生事業を実施すべきではないかと考えている。建築計画的な提案はもちろんだが脱炭素計画に寄与するような画期的な提案と設備や部品開発につなげ、初期の公団住宅が果たしたような先駆的なビジネスモデルにつなげることが出来れば、民間事業者にとっても非常に有効なソリューションモデルにつながるのではないかと期待している。

是非協会会員諸氏のこの問題への積極的な関与と、国に対する働きかけを期待してやまない。




 

山田 尚之(やまだ・なおゆき)

個人賛助会員 鳩ノ森コンサルティング 


 

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